Tanzkurs

  前編  




「ドラコ・マルフォイとは授業の後残りなさい。」


マクゴナガル先生はおっしゃった。


生徒は少しざわめいて、そして呼ばれた二人を見た。


二人は名前をよばれてお互い顔をあわせ、そして・・・・・





・・・・睨みあっている・・・。















スリザリンのドラコ・マルフォイとレイブンクローのは幼馴染だ。

お互い家柄も良く家も近所で、二人は幼い頃、それはそれは兄弟のように育った。

・・・・・・ということは二人の幼い頃を知るもの(クラッブやゴイルなど)でしか知らない事実だった。






現に、お互いホグワーツ生となった今、昔の仲が信じられない程、互いにいがみ合っている。

原因はクラッブによると、寮が違う事、グリフィンドールじゃないにしても、その彼らと仲がいいのでは同じ事。

ドラコが邪険にするハリー・ポッターらとは仲がよかった。




違う原因はゴイルによると、互いにライバルである事。二人ともクィディッチ選手であるし、

勉強もハーマイオニー・グレンジャーには勝てないとしてもいつも2位を争っている。





・・・とりあえず、生徒公認に敵対している二人が呼ばれたのだ。

一体何をしでかしたんだろう・・・?


生徒は好奇の眼差しで二人を見つめた。








他の生徒がいなくなり、二人は顔をチラリとも合わせることなく先生の前に立った。

二人とも呼ばれた理由など問題とはしていない様子だった。

ただ、早く先生の用事を聞いてさっさと互いの顔の見えないところまで行きたい。

そんな感じだった。





マクゴナガル先生はおっしゃった。

「あなた達二人に見本となっていただきます。」

二人は声をあげずには眉だけ動かし、ドラコは目を細めて、先生を見つめた。

「クリスマスダンスパーティの事です。」

先生はしれっと二人の表情に答えた。

「「は?」」

今度は二人とも声をだした。偶然にも重複してしまってお互い睨みつける。

「知っていますよ。」

マクゴナガル先生は続けた。

「あなた達二人が昔、魔法使い社交ダンス全英大会ジュニア部門で優勝した事。」

はかっと真っ赤になり、ドラコはくちをポカンと開けた。


「あなた達は代表選手ではありませんが、ホグワーツの品位を損ねないよう、

パーティを前にダンス講習を行います。

そこであなたたちに前に立ち生徒の見本となってもらいます。」

「「えーーーーーーー!!!!!」」

「校長の決定です。いいですね。講習は明日夕方から行います。」

二人は蒼白になった。



・・・そんな・・・。






マクゴナガル先生のおっしゃる通り、二人は幼い頃から社交ダンスを一緒に一流の先生に習っていた。

ルンバにワルツにタンゴ・・・

いつも二人でペアを組み、何度大会で優勝を掻っ攫った事だろう。

それが今になってこんな苦渋を強いられるなんて・・・。











「嫌よ!!ぜーったい嫌!!」

「僕だって願い下げだ!!!」

教室から互いの寮に戻るのに二人は早足だった。

「ドラコ!!あなた私に触れないでよ!!」

「当然だ!!、お前がターンで仰け反っても僕は受け止めないぞ!!」

フン!!!と互いの寮への分かれ道で二人は思いっきり顔を背けた。




++







翌日講習の時間

皆の前に立つ二人はいっそう渋い面立ちだった。

先生直々に寮の部屋に呼びにこなければ二人とも仮病でも使ってバックレようと思ってた程だ。

生徒はいきなり前に出された二人を不思議な顔立ちで眺めている。

「ドラコ・マルフォイとは魔法使い全英社交ダンスコンテストでチャンピオンの称号を何度も得てきました・・・・・・・・」

マクゴナガル先生が説明した。

生徒はおお〜と驚きと尊敬の声をあげたが、皆の前で距離をおいて立つ二人は

明らかに”余計な事言いやがって”みたいな顔つきで、ホントに全英チャンピオンなのか疑わしいカップルだった。



「・・・・・・・・ではまず、二人に実力を示してもらいましょう。」

なぬ!?と、二人の顔つきが強張った。



「・・・何の曲にしましょうか・・・?得意なものがありまして??」

先生は二人に聞いた。

顔をしかめるにドラコは

「・・・ワルツをお願いします」

今日皆が習うのもそうですからと申し出た。

ははい??とドラコを睨んで・・・、そして小声でドラコに文句を言った

(ちょっと!踊るつもり!?)

ドラコはもう逃げられないだろうと悟った様子で。

(一番面倒がないだろう!?)

僕だって不本意極まりないね、とに告げた。


ゆったりとした曲が始まって二人は見合わせたものの顔を背けてポジションについた。

だが、身体はギリギリのところで触れていない。

何人かの生徒がそれに気付いた。

ビシッと決まった姿勢で、そしてステップを踏む。


顔は背けられ、全然触れておらず、不自然といえば不自然だったが二人の踊りは完璧だった。


生徒から拍手をうけ講習も滞りなく運んだ。










「ドラコ、さすがだったね。」

寮でゴイルがそうドラコに言った。

昔はクラッブと二人でよくドラコの踊りを見てた。

久しぶりに見ることができて気分が高揚しているようだった。

「ブランクを感じさせないよ。ドラコもも」

クラッブも興奮していた。

ドラコはフン!と鼻をならして

「あんなのはダンスじゃあない。表情のないダンスなんてカスだ!!皆はカスのダンスを見たんだよ。

僕もも不本意だったんだ。アイツと昔のように本気で踊ってたまるか!!」

ドラコの言葉にクラッブとゴイルは顔を見合わせて「そうかい?」と言った。

「確かに身体には触れてなかったけど、・・・楽しそうだったじゃないか。」

「そう見えたよ。」

「ハッ!!馬鹿な!!勘弁してくれよ、もう昔の僕らじゃないんだ」

ドラコが肩を竦めて言う言葉に「そりゃそうだけど・・・」とクラッブが口篭もった。

「昔は楽しんでたろ?ダンスは好きだったじゃないか」

「まぁな、昔は・・・そうだな、優勝を掻っ攫うのは気分が良かった。それで好きだったんだろ。

 でも別にパートナーはじゃなくてもよかったんだ。」

「ふうん、でもまた見たいなぁ、・・・パーティは誰といくんだい?」

「パーキンソンだ。っていうか誰でもどーでもいいさ。あんなダンス誰とでも踊れる事を証明してやる。」

ゴイルとクラッブは顔を見合わせた。

ドラコが簡単に思っているダンスが皆にどれだけ難しいかを教えたかったが、それも叶わなかった。











一方はパーティのパートナーを断るのに大忙しだった。

各寮の知らない生徒から申込みをうけても、正直自分より踊れなさそうな人とは組みたくはない。

とはいえ、自分と対等に踊れるのはドラコ・マルフォイだけだろうし・・・。

いっそもう壁の花にでもなろうかしら・・・。

そんなことを考えていた。その時

「ミス・、考え事かね?歩く時は前をみるものでは・・・?」

声をかけた相手はスネイプだった。眉間に皺をよせ、上から見下ろしてくる。

はスネイプを見つめた・・・。

先生と私のこの身長差・・・。先生のこの物腰・・・・・。・・・これだ!!

「・・・・・・??」

じっと見つめてくるにスネイプは皺を深くした。

「先生・・・。」

「・・・何かね・・・?」

「私と踊ってください!!」

「・・・・・・・・・・・・は?」

一体何を・・・とスネイプが口を開きかけるよりも早くはスネイプのローブにしがみついた。

「先生!!お願い!!私とパーティで踊ってください!!」

「・・・何をする!!ダンスだと!?下らん!!」

スネイプはローブからを振り払った。は負けじとスネイプにしがみついた

「私まだパートナーが決まってないんです。でも踊れない人とは嫌。先生はきっとダンスが上手いわ!
 
 私のダンスの勘がそう言ってます!!お願い、私と踊って!」

「ええい、くっつくな!離れろ!!我輩は踊らん!!」

「いいえ!!先生は絶対踊れる人間です!幼い頃習っていたのではないですか?!」

「うっ・・・・・。」

図星を示されスネイプは口篭もった。は離れない。

「先生!お願い!!一曲でいいから!!」

がっしりとしがみつかれてスネイプは振り払う事ができなかった。

「・・・・・・・・・わかった、・・・わかったから離れろ!!」

「・・・・・・本当ですか・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・ああ。」

その答えにようやくはスネイプを開放した。スネイプはジロリとを睨んでこう言った。

「・・・・・・だが、我輩は生徒の前では踊らん」

「ええー!!それじゃあダメですよ!!教師と生徒が踊っちゃいけない規則なんかないでしょ!?」

ダンスの意味ないですよーというにスネイプはフンとあしらって

「特定の生徒と踊るなど、我輩の教師としての威厳に関わる事はしたくない。」

ともっともらしく言った。

「それなら良い考えがあるぞ」

突然後ろから声がしてスネイプとが声のしたほうを振り向くとダンブルドアがにこにこ笑って立っていた。





後編につづく