それは突然だから

ポーン・・・、と部屋にインターホンが鳴り響いた。


私はベッドに横たえていた身体をぐるりと回して玄関の方を見た。






この家に客なんて。




聞きなれないインターホンはまたもポーンと鈍い音を奏でた。



ベッドから置きあがる前に、ドアの前の主はもう一度インターホンを鳴らして


ゴンゴンゴン、と鈍くノックする。



私はなるべく足音を立てないようにドアに近づいた。






























「ぎゃっ!」



ドアの前の主を見て、私は素っ頓狂な声を出してしまった。


透き通るようなシルバーブロンドが立っていたからだ。




「”ぎゃあ”とはなんだ。」



「ど・・・ドラコ・・・!!!??」



黒いパンツに黒いジャケットを着て、いつもどおり、偉そうに腕組をして


我が家の前で仁王立ちしている。




「寝てたのか?さっさと出ろよ。」


そう言ってドラコは少し顔を覗かせただけのドアを引いて中に入ろうとした。



「ちょ・・・!ちょっとまって!!」



がつっと引かれたドアノブを握る手に力を込めた。



「なんだよ。」



「なんだよ・・・てゆーか・・・。どーしたの?突然・・・。」


じろりと睨んだドラコは眉を一層深く寄せた。



「来ちゃ悪いか?」




「わ、悪くないよ・・・。けど・・・そのぉ・・・。」


「なんだよ」



尚もドラコはドアを引こうとするので、私は一生懸命腕に力を込めた。




「2・・・3分、待って。」




は?という顔を一瞬ドラコはしてから「馬鹿をいえ」そう言ってドアを思いっきり引いたので

私は前につんのめってしまった。




「ち・・・散らかってるから・・・!」



「うるさいな。」



ドラコは乱暴にドアを開けるとつんのめった私を無視してずかずかと上がり込む。

私はドラコが通る傍から散らかした衣類やらテーブルに置きっぱなしのマグやらを片付けた。


「来るなら知らせてくれればよかったのに・・・!」


「突然来ると都合が悪いのかい?」



そうじゃないけど・・・。と口をつぐむ。


ドラコがこの部屋に来るのは初めての事なのだ。


だからもっと本当は綺麗な形で迎えたかっただけなのに。


かき集めたシャツにぎゅっと指を絡ませた。




そしてらドラコはふと思い出したように「ほら」と、隠すように手に持っていた小さな花束を私に差し出した。


「土産」


「あっありがとう・・・」


彼は唐突だけどいつも小綺麗な身なりでこんなに素敵な事をしてくれるのに、


今日の私といったら、なんで部屋をこんなに散らかして、

おまけにもう真昼間だというのにパジャマという、なんてみすぼらしい格好なのだろう。






「それにしても狭い部屋だな!」


1DKの部屋をぐるりと見まわしてドラコは悪態をついた。


「・・・言ったじゃない・・・!休みの日は国に帰るのが面倒だから小さな部屋を

 間借りしてるって・・・」


「小さいとはいえ、ここまで狭いとは思わなかった。

 マグルというのはこんな所で生活できるのか?ホグワーツの寮以下じゃないか?」


「いいのよ一人だし。・・・安いし・・・。」


「ふーん・・・」


言ってドラコはベッドの上に投げてあった私の下着を摘み上げた。


「きゃー!!!」


慌ててドラコの手から下着をもぎ取る。


はっ、とドラコは鼻で笑って、今度は真っ赤になった私の頬を摘んだ。


「本当に寝てたみたいだな。」


「・・・。」


「寝跡がついてる。」


「・・・顔洗ってくる・・・。」


「その前にキスを」


「嫌」



嫌だと確かに言ったのに、言うが早いかドラコは寝跡にキスをした。


ぎゅう、とパジャマの私を抱きしめて「会いたくて来たんだからもっと抱かせろよ」と言う。


私は持ってた衣類や下着を取り落としてしまった。






ベッドにドラコが座るように倒れこみ、上に乗った私の唇にキスをした。


ドラコのジャケットの事なんかお構いなしだ。



今この部屋いっぱいが私の香りで、ドラコはどんな気分なんだろう。


うっとりと私も久しぶりのドラコの匂いに包まれたくて首元に顔を埋めた。




「・・・・・・?もしかして君・・・」


ドラコが何かを確かめるべく私の身体を弄った。


「あ・・・ん。・・・何?」


「・・・ノーブラ?」



だって私は寝てたんだし。いまだにパジャマだし。


さっきドラコも摘み上げたじゃない。




「そんななりで玄関に出るなんて、なんて下品な女なんだ・・・!」



僕じゃなかったらどうするんだ馬鹿!とドラコはベッドの上で叱りだした。




だってこの家のインターホンが鳴るだなんて思ってなかったし。


客の誰もがパジャマ姿を見るだけでノーブラだなんて思う訳だってないし。
(現にドラコだって今気付いたくせに)




そんな事を言ってはみても







「ああ、なんて君は馬鹿なんだ」







そういってぐるりと私を下にしてしまって、ドラコはキスを続けるのだ。







1DKに置かれた小さなベッドは二人の隙間を埋めるにはちょうどよくて


ぎしっと音をたてた。